ドラえもんの空き地にあるのは「土管」ではなく「ヒューム管」
ジャイアンがリサイタルをする舞台でおなじみの「土管」ですが、実は「土管」ではないんです。土管とは粘土を焼いて作った管であり、主に茶褐色やこげ茶色をしています。
▼土管
作品で描かれている通称土管は灰色をしておりコンクリート製であるのが見て取れます。建築資材としては同じような用途ですが、コンクリート製の物は「ヒューム管」といいます。ということで、ドラえもんの空き地に置かれている3本の通称土管は「ヒューム管」と呼ぶのが正しいかと思われます。
藤子不二ミュージアムの公式ブログでも、正式には「ヒューム管」であることに言及されています。
ちなみに「ヒューム管」のヒュームってなに?って思いますよね。ヒュームは発明した人の名前です。1910年、オーストラリア人の兄弟、E.J.HumeとW.R.Humeによってヒューム管の製造方法が考案され、商品名に名前が用いられています。
▼ヒューム管
せっかくなので、水道屋さんドットコムらしく、もう少し解説させてください。これを機会に水道についてもう少し詳しくなりましょう。知っておいて損はありません。
ヒューム管が活躍するのは主に下水道です。お風呂や洗濯、トイレなどで使用された生活排水が通っていくのが下水道です。下水道を通じて下水処理場(水再生センター)に辿りつき、そこで浄化して海や川へ放水されます。我々日本人が衛生的に生活する上で下水道は欠かせない存在です。あの空き地のヒューム管は、私たちにとって大切な代物だったのです。
■なぜ、空き地にヒューム管が置かれていたのか?
ドラえもんの描かれた1970年代の東京は、下水道整備の真っ只中でした。それまでは汲み取りのトイレいわゆるボットン便所が多く存在しており衛生的にも不便でした。それを現在のような水洗トイレにすべくあちこちで下水工事が行われていたのです。下水道の建築資材として「ヒューム管」が使われており、工事のために広い場所では建築資材が置かれていたことでしょう。空き地に「ヒューム管」が置かれていることは、当時の東京では当たり前の光景だったのだと想像できます。
つまり、ジャイアンが歌うための舞台ではなく、のび太やスネ夫が遊ぶためでもなく、当時の日常風景を描くためにヒューム管は置かれていたのだと思われます。(藤子不二雄先生、推測は当たってますでしょうか?)
■下水道の普及
現在、日本の下水道普及率は約92%です(2021年現在)。トイレで用を足して流してしまえば、排泄物を見たり臭ったり嫌な思いをすることはありません。下水道を通り処理場まで流れ着くように整備されているからです。のび太たちが生活していた時代にはボットン便所が、まだまだ活躍しており、便槽に貯めた汚物を汲み取って処理していたのです。空き地に置かれているヒューム管たちが地中に設置されていくにつれて、下水道が整備され現在のような便利な生活を提供されたのです。ドラえもんの空き地の映像を見たときは、下水道が整備されている有難さに想いをせてみてはいかがでしょうか。
といことで、のび太やしずかちゃんたちが集まる空き地に置かれている建築資材「ヒューム管」について解説いたしました。仲間内でドラえもんの話題になったときには、ぜひ「土管」ではなく「ヒューム管」について話してみてはいかがでしょうか。持ち上がるかどうかは保証しませんが。
また、水道屋さんドットコムでは下水のトラブルに対応できる会社様が多数掲載されています。排水の詰まりの際にはお近くの水道屋さんを検索してみてください。